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アサギマダラの体温調節機構(2013.06.06)

アサギマダラはなぜ旅をするのか

アサギマダラの生理・生態・行動などの基礎的な研究はあまり進んでいないのには驚かされます。

blog2013の冒頭に書きましたように、アサギマダラの生活適温(体温)を計ってみることにしました。HOGAさんに助けられて器具を揃えたり、 気温や陽光などのかかわりを実測したりしてアサギマダラの到来を待っています。
もっと簡単に出来ると思っていた体温測定がとても大変で、素人で年寄りの私には無理であることが解かり、大崎直太先生に紹介していただいて 滋賀県立大学教授の西田隆義先生のご支援とご指導をいただけるようになりました。

***アサギマダラの生活適温(体温)の調査計画書(案)

マーキング法によるアサギマダラの全国調査が始められてから30年を迎えました。参加者も増え、 調査データも蓄積されていろいろなことが分かってきましたが、肝心な生理・生態の基本的な調査研究は進んでいないのが現状です。

アサギマダラは海を越えての長距離の旅をすることで有名ですが、なぜそんな危険な旅をするのかが最大の謎とされています。 春は海岸沿いに北上し、夏は涼しい山地で過ごし、秋は長距離を飛んで南の国で冬を過ごすという生活史は明らかになってきましたが、 それが生活適温(体温)を求めての旅だとすると多くの生態に納得が出来るのです。

大崎直太先生は30年以上も前にモンシロチョウ属3種のチョウについての生活適温(体温)を調査され、 『チョウの体温調節と生息場所の利用のしかた』という論文を発表されました。アサギマダラについてもこの調査は欠かせません。 体温測定は季節、場所、行動(できれば雌雄別)の要素をからめて調査計画を策定する必要があります。

@ 季節 : 春・初夏・夏・秋 (春季は九州以南になるので除外か?)
A 場所 : 標高と緯度により設定 (初夏は海岸および山地・夏は1000m以上の山地・秋は9月中旬〜10月に内陸部・10月〜11月に四国沿岸部)
B 行動 : 飛翔時・吸蜜時・静止時

参考(既に決まっている行事を含む)
5月26日:びわ湖バレイ(BVアサギマダラの会の総会) 終了後山上で調査
6月9日:京丹後市でアサギマダラ・マーキング会の指導 前日に調査可能
7月下旬にはびわ湖バレイのヨツバヒヨドリにアサギマダラ飛来
8月には福島県磐梯山のデコ平にアサギマダラ集結(緯度による比較)
9月中旬には長野県中綱湖畔(大町市)のフジバカマ園にアサギマダラ飛来
9月下旬:京都水尾のフジバカマ園にアサギマダラ飛来
10月下旬〜11月初旬:四国沿岸部(高知県室戸岬or足摺岬近辺)
調査方法(大崎直太先生の調査データと比較できるように、方法も踏襲する)
・熱電対温度センサーをアサギマダラ体内に差し込んで計測する。器具は大崎 直太先生に紹介していただいた業者(HOGA)で調達済み。そのほかデーターロ ガー温度計、照度計、温度計(5本)なども購入済みである。
・アサギマダラは北上季の海岸部では早朝(薄明時)から活動し、白昼には森に入 って見られなくなるので、前日からの車中泊、またはテント泊が望ましい。
(立案:金田2013.03.31)

***びわ湖バレイのアサギマダラ(2013.06.06)
びわ湖バレイにアサギマダラが見られる条件について感じていることをお伝えし、参考にしていただこうと思います。
梅雨前線は南に停滞し、次々と移動性高気圧が本州を東に通り過ぎていきますが、天気が良い日には南東の風が吹く日が多いのです。
つまり、びわ湖バレイの上空は南寄りの風なのですが、一方陽光を受けると山腹の空気が暖められて激しい上昇気流が生じます。 山麓の気温が25度を超える頃、アサギマダラは上昇気流に乗ってあっという間に(コストを払わずに)涼しい山上に上がってきます。 一方、チャンピオンコースも上昇気流が山頂に向かって吹き上げますが、その風にはヨツバヒヨドリの香りがいっぱい含まれております。 というわけで、琵琶湖側から上がってきたアサギマダラは香りをたどってチャンピオンコースのヨツバヒヨドリ保護区に集まってくるのですが、 時々雲が出る時間帯には上空の南寄りの風に合わせて吹きおろしとなります。しかし間もなく陽が差し始めると再び吹き上げの風に変わり、 アサギマダラが戻ってきます。

昨日は昼過ぎには曇り、パタッとアサギマダラが出なくなりました。照度20000Luxでしたが、みるみる気温は下がり、23度を下回りました。 天気が良ければ23度の日でも活動できるのですが、照度が低いと体温も下がって活動できなくなり、森でお休みです。

今年はアサギマダラの体温測定を始めましたが、これまでの平均は30度あまりです。つまり、気温+太陽輻射熱で適正体温を維持しているのです。 仕方がないので未練がましくロープウェイ下に行ってみました。陽射しがあり、アサギマダラもいましたが、こちらも30分ほどで曇りに なってアサギマダラは姿を消しました。
ヨツバヒヨドリには♀もストローを伸ばしているのを見ました。捕まえてみたら雌雄型ではありませんでした。PA=雄の誘引物質と思って いましたが、また謎が増えました。

ロープウェイ下は足場が悪いので気を付けてください。タオルを回すのも非常に効果的です。日によって回転数を変えて試して見てください。 6/3は3回/sが適正でしたが、6/5は2回/sだと1mまで寄ってきました。3回まわすと1.5mでUターンするのです。

アサギマダラと遊ぶのは楽しいですね。今度の土日の好天を祈ります。


***アサギマダラの初夏の体温(2013.06.29)

西田先生が学生の立花くんと一緒にびわ湖バレイに来てくれました。

朝9時の山上は快晴で、14.5℃、南東の風3mと絶好の散策日和でした。こういう日は蓬莱山の南東斜面に強い上昇気流が生じるので、 パラグライダーの飛行日和です。次々と飛び立ったライダーが更に高度を上げてまるでトビになったかのように大空を舞っていました。

生態学者の西田先生の話はとても興味深くて、一緒に散策させていただくのは最高の贅沢だと思いました。残念なことに、びわ湖バレイは この2〜3週間の間はアサギマダラがいない季節でしたが、代わりに沢山のウラギンヒョウモンがスキー場の草原を飛び回っていました。

持参した熱電対温度計を使ってチョウの体温測定の実習をすることになり、機器の操作経験のある私は助手の役目で西田先生と立花君が チョウを網に入れるとすぐに飛んできて、私から受け取った熱電対の先端をチョウの胸部に差し込むのです。すると接続したデジタル温度計 に温度が表示され、その直後に気温を測定して記録するという手法です。

大崎直太先生は『捕獲して8秒以内に測定できなかったものはデータ から除外した』と書いておられますが、網から取り出すまでに8秒ぐらいかかってしまい、ほとんどが10秒を越えてしまいました。

大崎直太先生の基準では、格外のデータとなるわけですが、日向で暮らすチョウの体温は36℃〜37℃ぐらいのものが多い事が分かりました。

5月〜6月にこの辺りを通過するアサギマダラ58頭について体温を測定したのでそのデータは PDFアサギマダラの体温調節のしかた―アサギマダラの体温―として収録しました。

また、アサギマダラの体温に影響を与える主な要因については、簡単な実験結果をで PDFアサギマダラの体温―気温、光と陰、風の関係―として収録しました。

北アメリカで大移動をするオオカバマダラについては、NHKが2007年に『神秘の蝶 驚異の大冒険 〜北米大陸5000キロを渡る〜』という 番組で放映しましたが、研究者も多く、衛星やグライダーを使っての追跡まで行われ、アサギマダラの移動にも参考になるデータがたくさん あります。海野和男さんの著書なども参照して書き留めたのがPDFアサギマダラとオオカバマダラ です。

アサギマダラの体温調査は,大崎先生や西田先生,保賀昭雄さんなどのご指導により,北上期の調査は終わりましたが, その調査法については反省させられることも多々あり,参考にしていただけるようPDF アサギマダラの体温調査の方法ー機器や器具・測定の仕方ー(2013.07.02)として収録しました。

アサギマダラの体温と関係の深い気温や照度・風の関係については私にはわかっていないことがたくさんあります. PDF気温・体温・照度・風の関係―私には分からないこと―として収録しました。

アサギマダラの夏の体温(2013.07.27)

アサギマダラの夏の体温(1) ―びわ湖バレイのヨツバヒヨドリ―

高山や高原で越夏するアサギマダラは生息数が多いので,日向と日陰等の環境により区分して各10頭ずつ体温測定を行うことにしました. その手始めがびわ湖バレイのヨツバヒヨドリで吸蜜中のアサギマダラでした.日向と日陰に分けて測定しましたが,初夏の数値と大差は ありませんでした.書き留めたのがPDFアサギマダラの夏の体温(1)です。